【堀 育代×和泉 利明】不動産の価値を上げる、リノベーションのデザイン編

リノベーションにおけるデザインのあり方について語り合う、株式会社ワッフルの代表取締役 和泉和明とデザイナーの堀 育代さん。

話が進む中、10年を超える経験で和泉社長がたどり着いた「リノベーションが本来あるべき姿」と、海外でのデザイン経験も豊富な堀さんならではの「デザイン観」からは、ひとつの共通する「不」が見えてきました。

それは、今の日本のリノベーションは本当に住む人の側に立ってなされているのか、ということ。

コスト減を求められる一方でニーズが多様化する中で、リノベーションが本来もつはずの「住む人に寄り添ったデザインができる」というメリットが置き去りにされているのではないか。不動産会社は、そしてデザイナーは、これからどういった目線でリノベーションに取り組むべきなのか。

ふたりの話は続きます。

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■住宅デザインとは、生きてゆく空間を創ること

 和泉  堀さんはもともと、住宅ではなく商業建築のデザインをメインで手がけられていたんですよね?

 堀  そうですね。レストランですとかお洋服屋さんですとか、最近だとスパとか。商業的な空間のデザインをさせていただくことはよくあります。

 和泉  商業デザインとは違う住宅デザインのおもしろさや楽しさはどんなところでしょうか。

 堀  住宅では、朝起きてから夜寝るまで、24時間その空間を楽しむわけですよね。商業デザインでは、その場で過ごす「瞬間」を楽しませる空間を作りますけど、住宅デザインでは、もっと長い時間をかけて共に生きてゆく空間を作ることになるんです。ですので住宅デザインでは、風の流れとか太陽の入り方とか、瞬間のものとは違ういろんな要素を含めてデザインするようにしています。

 

■本当に温かみのある「デザイン」「リノベーション」とは

 和泉  僕は、堀さんが以前おっしゃっていた「温かみのあるデザイン」というお考えにとても共感しています。リノベーションの中古マンション販売に携わってもう10年以上が経って、リノベーションのスタイルも多様化してきましたけど、画一的なデザインで大量に売るのではなく、物件に合わせて一軒一軒きちんとデザインすることを、不動産会社はもっとやるべきだと思います。

 堀  人って、家族同士であっても誰かとまったく同じ生き方をすることはないわけじゃないですか。そう考えれば、画一的な間取りが住む方にとって本当にいいのか、それはわからないですよね。でもリノベーションのいいところは、一度は画一的に作られたものかもしれないですけど、一度すべてをゼロにして、次に住む方に本当に合ったシーンを作れるというところだと思うんです。

 和泉  確かにそうですね。それに加えて、不動産会社の立場でリノベーションに対してもう一つ言うと、いくらデザインで中身をきれいにしても、例えば建物が傾いていたとしたら、「デザインが素晴らしいから安心ですよ」とは言えないわけじゃないですか。不動産を売る者として、部屋はマンションや地域とリンクしたものとして考えるべきだと我々は思っているんです。その上にデザインという個性的な要素が重なることで、初めて本当に温かみのあるデザイン、リノベーションだと言えるんじゃないかと、僕は思うんです。

 

■日本もようやく「住」にお金と時間を注ぐフェーズになってきた

 和泉  堀さんは海外でのお仕事をたくさん経験されていますが、そのご経験から見て、日本と海外のリノベーションの違いはどんなところにありますか?

 堀  海外では、衣食住のプライオリティーはほぼ同じで、お洋服にかけるお金、食べ物にかけるお金と同等に、住む空間にも価値が置かれています。

でも、日本ではまずファッションにお金をかけて、次に食生活にお金をかけて、住むところは二の次、三の次にされてきた気がしますね。以前は、「住むところは寝るだけだからいいよ」とお考えの方が、わりと多くいらっしゃいました。自分の限られたお金と時間を住まいに注いでもいいかな、というフェーズに来たのは、この10年ぐらいのように感じます。

例えば韓国や台湾の人たちは、マンションはスケルトン状態で買うんです。更地を買うのと同じような感覚で、そこにデザイナーが入って「どんなお部屋にしますか」とプランニングが始まるんですけど、日本ではそういうことが少なくて、特に新築の場合は、すでにでき上がっている選択肢の中から選ぶパターンがほとんどですよね。

その点リノベーションは、一度内装をなくしてから、住まわれる方を想像してプランニングできるわけですから、この時代だからこそ共感する方は増えていくんじゃないかと思います。

 

■リノベーションの世界は二極化が進んでいる

 堀  ただ、今のリノベーション業界は二極化してしまっていると思います。

「引っ越したい街に自分たちが想像するものに近い部屋があるのであれば、そこでいいじゃないか。みんなそういう生活を送っているんだから、自分達もそういう生活でいいじゃないか」と考える方々と、「自分達はこういうことをしたい。だからこういう場所が欲しいんだ」という人とで二極化されて、リノベーションのスタイルにおいてもこの二極化が進んでいると思います。

 和泉  画一的にリノベーションして大量に売っていくというスタイルで販売するリノベーション会社は確かに多いですね。メーカーさんと組んで極力安く作っていこうとするわけですけど、そうすると個性がなくなってしまうのかなと僕は思います。 かといって、じゃあいっぱいお金をかけてデザインに凝っていけばいいのかと言えば、そういうものでもない。

そこで、その真ん中というと言い方は変かもしれませんが、温かみがありつつデザインも立っているようなリノベーションを求めて、堀さんにお願いをしたんです。

 

■「和泉社長は“住まわれる方目線”のデザインを求めているのかなと」

 堀  おっしゃる通り、高ければいいというものではありません。デザイナーの巨匠の言葉ですごく好きなフレーズがあるんです。

「デザインとは、人に花束を差し上げるものだ」

って。バラの花をあげたら喜ぶのか、ユリの花をあげたら喜ぶのか、あるいはタンポポをあげたら喜ぶのか。それってお花の値段で決めるものではなくて、その人がどんな花を求めているのかで決めるものですよね。それがまさにデザインであるのだと思います。

住宅で言えば、最高級のキッチンを入れたから喜ばれる方もいらっしゃれば、土間を作ったほうが喜ばれる方もいらっしゃる。

求める方が喜んでくださることが大前提なので、この人は何をして欲しいのか、どんなことが好きなのかと考える。それがデザインの付加価値というものなんだと思います。

 和泉  リノベーション業界は、画一的にたくさん作る方向か、コンクリート打ちっぱなしのような奇抜さに走る方向しかなくなってしまって、実際に住む人たちがどういうものを求めているのかではなく、自分たちが売りやすいものを作っていくっていうスタイルになってしまっていたと思いますね。

 堀  一方通行になっていると感じることはあります。「暖炉が流行っているから、とにかく暖炉を入れる空間を創ったらいいんじゃないか」とか、「大きめのシャンデリアを入れたら写真映えもするし高そうにも見えるからいいんじゃないか」とか、そういったリノベーションのやり方ももちろんあると思いますが、和泉社長はそうではなく、住まわれる方目線のデザインを求められているのかなと、私は思っています。

 

続編「目指すのは、街や地域とリンクするリノベーション」 へつづく

 

 

 

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