編集部
中古マンションの耐震ってどうなの?見分け方と選び方
[不動産知識]
マンションを選ぶときに気になるのが「耐震」のこと。地震の際の安心はもちろん、資産価値や住宅ローン控除などにも関わる部分であり、みなさん気になるところかと思います。この記事では「そもそも耐震基準ってなに?」というところから詳しく解説。耐震性以外でチェックしておきたいポイントもあわせてご紹介します。
目次
- 1.気になるお住まいの耐震性。マンションの耐震性って一戸建てに比べてどうなの?
- ・マンションと戸建ての耐震性の違い
- ・「中古マンション」でも耐震性は大丈夫?
- 2.「新耐震基準」適合の物件を選んだほうがいいの?
- ・新耐震基準とは
- ・旧耐震物件のデメリット
- ・旧耐震物件のメリット
- 3.耐震・制震・免震のちがい
- 4.新耐震基準以外でチェックすべきポイント
- ・ポイントは「管理状態」
- ・躯体は築年数とともに少しずつ経年劣化する
- ・マンションの大規模修繕ってそんなに重要?
- ・管理体制ってどうすればわかる?
- ・崩れやすい構造・階数ってある?
- 5.地盤のチェックもしておくとさらに安心
気になるお住まいの耐震性。マンションの耐震性って一戸建てに比べてどうなの?
〇マンションと戸建ての耐震性の違い
「耐震性」という点において、マンションと一戸建てに大きな違いはありません。
建物の耐久性は「耐震等級」という基準で見ることができます。そのため耐震等級が同じであれば、マンションも一戸建ても耐震性は同等です。
ただし、マンションと一戸建てでは「耐久性」が異なり、同じ築年数が経過したあとの建物の状態に違いがあります。耐久性は耐震性にも関わるため、築年数が同じだけ経過したあとの耐震性はマンションのほうが高い傾向にあります。
+α マンションには防災設備があることも
マンションだと防災倉庫などの設備があることもあります。いざというときにマンション共用の備品も使えるため、安心感があるでしょう。
〇「中古マンション」でも耐震性は大丈夫?
新築のマンションは最新の建築技術で建てられており、建物の経年劣化も進んでいないため耐震性に優れています。しかし、「中古マンションが危険!」ということはありません。
マンションの耐震性は「新耐震基準に適合しているかどうか」という点で見ることができます。現行の耐震基準に適合していれば、震度6~7程度の揺れでも倒壊しないように設計がされています。
耐震性を考えて中古マンションを選ぶときには、「新築か中古か」よりも「新耐震基準に適合しているかどうか」という点をチェックしてください。
「新耐震基準」適合の物件を選んだほうがいいの?
耐震基準とは、建築物を設計するときに適用される、地震に耐えることができる建物構造の基準です。
〇新耐震基準とは
現在施行されている耐震基準のことを、一般的に「新耐震基準」と呼んでいます。
昭和56年6月1日に導入されたもので、この日以降に建築確認がとれている建物が「新耐震基準に適合している」とされます。
建築確認が昭和56年6月1日以前にとられた建物であっても、適切な耐震補強工事などを行うことで新耐震基準に適合する場合があります。
建築確認がとれた日と建築年月日は異なるため、建築年月日では判断できません。新耐震基準の適合について正確なことが知りたい場合は、不動産会社に問い合わせるようにしましょう。
◆旧耐震基準とは
新耐震基準以前に施行されていた耐震基準が「旧耐震基準」と呼ばれます。
そのため、新耐震基準に適合しない建物は「旧耐震基準の建物」と言われます。
〇旧耐震物件のデメリット
・地震のときに倒壊する危険性がある
国土交通省が発表しているデータを見ると、阪神・淡路大震災の際、昭和56年以前に建てられた建物に大きな被害が発生したことが分かります。
参考:国土交通省「住宅・建築物の耐震化について」
「旧耐震基準だから地震の際に絶対に倒壊する」というわけではありませんが、新耐震基準の物件より倒壊の危険性が高いことは事実です。
・築年数自体が古い
建築年月日が昭和56年以前であることがほとんどなため、築年数としても40年近く、もしくはそれ以上経過していることになります。そのため、建物自体の経年劣化も進んでいるといえます。
また共有部分も古く、最新のセキュリティ設備などがついていないという可能性も高まります。
・資産価値の面で劣る
建物の耐震性・耐久性が新しいマンションより劣るため、不動産としての資産価値も低くなる傾向にあります。
・住宅ローン控除が利用できないことも
住宅ローン控除の適用条件のひとつに、「新耐震基準に適合していることが書類により証明されていること」というものがあります。そのため、旧耐震基準の物件であると住宅ローン控除が受けられない可能性があります。
※新耐震基準に適合しない場合、建物の取得の日までに耐震改修工事などの申請をし、居住の日までに新耐震基準に適合していることを証明できれば住宅ローン控除が適用となる場合があります。
住宅ローン控除について、詳しくは以下の記事の「消費税負担を軽減する制度とは?」をご覧ください。
・住宅ローンの審査が厳しくなる!?
近年は新耐震基準に適合していない物件を購入する際は、住宅ローンの審査が厳しくなる傾向にあります。この傾向は今後進んでいくと予想され、旧耐震基準の物件の購入時には住宅ローンが借りにくいという状態になるでしょう。
〇旧耐震物件のメリット
・価格が安め
マンションの価格は築年数とともに下がることが一般的です。
【参考 築年数と物件価格の関係】
参考:公益財団法人東日本不動産流通機構「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2015年)」より
築後25年ほどは価格が落ち続けるため、築年数が35年以上経過しているような旧耐震基準のマンションであれば価格が落ち切ったあとであることがほとんど。そのため、新しいマンションよりも価格が安い傾向にあります。
・立地が良い傾向にある
現在のように建物がたくさん建つ以前に建てられているため、良い立地に建っていることがあります。
駅の近くなどの良い立地には早くから建物が建てられ、その建物が現在まで残っていることも多く、こういったことが起こっています。
耐震・制震・免震のちがい
物件の情報を見ていると、「耐震」のほかにも「免震」や「制震」といった言葉を見ることもあるかと思います。しかし、「耐震と免震・制震って何が違うの?」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか?ひとつずつ詳しくみていきましょう。
〇耐震構造
耐震構造とは、建物の「倒壊を防ぐ」ための工夫や建て方のことです。建物の構造体そのものの強度を上げ、揺れに耐えて建物の倒壊を防ぎます。
〇制震構造
制震構造とは、建物の内部に地震の揺れを吸収する専用の部材を組み込み、それ以外の部分の揺れを少なくする構造です。
〇免震構造
免震構造とは、建物全体に地震の揺れを伝えないための構造です。建物と基礎との間に免振装置を設置し、地盤と建物を切り離すことで、地震の揺れが建物に伝わらないようにします。
建物の揺れが小さくなるため、家具などの転倒の可能性も低くなります。
室内の揺れがもっとも少なくなるのは、免震構造で建てられたマンションです。ただし現在免震構造が採用されているマンションは少なく、一部の高層マンションなどでのみ取り入れられています。
新耐震基準以外でチェックすべきポイント
地震の際の住戸の安全性は、新耐震基準への適合だけでは決まりません。他にどのようなポイントが大切なのか見ていきましょう。
〇ポイントは「管理状態」
マンションの耐久性を決める大きなポイントが「管理体制」です。管理体制の良いマンションは耐久性も高いとされるのが一般的。それはなぜでしょうか?
〇躯体は築年数とともに少しずつ経年劣化する
マンションの構造体は、築年数が経過するとともに経年劣化が進みます。そのため、新築のマンションであっても築後10年建てば10年分の劣化が進みます。
だからこそ、この劣化を食い止める定期的な修繕などの「管理」が大切なのです。
〇マンションの大規模修繕ってそんなに重要?
たとえば、経年劣化によりマンションの外壁にヒビが入ったとします。これをこのまま放置しておくと、ヒビから水が入り、躯体の鉄骨が腐敗してしまうことがあります。このヒビを直すことが「修繕」にあたります。
ヒビを隠すという景観の保持だけでなく、躯体の劣化を食い止めることにつながるのです。
〇管理体制ってどうすればわかる?
マンションの管理体制の良し悪しは、今までの修繕の履歴をチェックすると分かります。
このとき、今後の修繕の計画や、修繕のためのお金がマンション全体でどのくらい貯まっているかなども確認しましょう。大規模な修繕のあとのため積立金が少ない場合は安心ですが、修繕をあまりしていないのに積立金が少ないときには注意が必要です。
また、管理体制には居住者のモラルも関係します。居住者のモラルが良くなく修繕積立金の滞納が多いと、十分な修繕を行えないことがあるためです。
マンションの内見に行ったときには、お部屋の中だけでなく共用部の使い方や居住者の雰囲気なども見ておくようにしましょう。
〇崩れやすい構造・階数ってある?
・マンションの形
複雑な形のものより、長方形のシンプルなマンションのほうが耐震性に優れているとされます。
また、ピロティがあるマンションは耐震性で劣るという見方が一般的です。ピロティとは1階部分に壁がなく柱のみで建物を支えている構造で、マンションであれば1階部分が壁のない駐車場になっている場合などがこれに当たります。1階部分の強度が低いため、倒壊の危険性が高いとされています。
・階数
地震の揺れは一般的に、建物の高層に行けばいくほど大きくなるとされています。また地震でエレベーターが停止したときなどは、低層階のほうが早く非難できます。
しかし災害は地震だけではありません。洪水などの水害のときは、高層階のほうが家に被害がでる危険性が低くなります。「この階であればなにがあっても安心」と言うことはできないため、ライフスタイルやそのほかの条件もあわせて階数を選ぶようにしましょう。
地盤のチェックもしておくとさらに安心
マンションの耐震性には、建物の構造だけでなくマンションが建っている地盤そのものも関係してきます。マンションが建っている場所の地盤も確認しておくと、より安心でしょう。
手軽に地盤のチェックをしたいときには、ジオダスでチェックすることができます。
該当する住所を選ぶと、地盤調和を行った結果を「良好地盤」「軟弱地盤」などの5つの評価で示してくれます。
まとめ
住居の安全性に深くかかわる「耐震性」。物件探しのとき耐震性のことを知っておくと、より安心できるお部屋を選ぶことができます。
新耐震基準への適合は地震のときの安心だけでなく、住宅ローン控除や物件の資産性などにも関わります。不動産会社の意見も参考にしつつ、自分のライフプランにあったお部屋を選んでいきましょう。